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経営コラム

第70回 資金繰りについての優先順位はどのように考えていますか?考え方を整理しておきましょう

2023.06.15 | 資金繰り

今回は資金繰りに関する優先順位について説明をしたいと思います。

 

ひとつ目は受取手形の取り扱いです。

お客様から売上代金として受け取った手形が手元にあり、それを資金繰りに利用したいと思った場合

・銀行へ持っていき、割引したほうがいいのか

・仕入先に持っていき、裏書手形として使った方がいいのか

それぞれのメリットデメリットをお伝えします。

さらに、それらと短期借入金との優先順位についても説明します。

 

ふたつ目は、どうしても資金繰りがつかない場合、どの支払から優先的に支払うべきなのか

逆にいうとどの支払先を待ってもらうのか、という順番です。

こういった状況にならないように普段から対策をしておかなければならないのですが

これは間違えれば大ごとになってしまうという問題です。

 

中小企業の社長の仕事は「決定をすること」です。

資金繰りについても常に「決定すること」が求められています。

その際に、明確な根拠をもって決定してもらうことができたらと思います。

 

 

割引手形・裏書手形・短期借入金

割引手形のメリットとデメリット

割引手形は、お客様から受け取った手形を金融機関に持ち込んで買い取ってもらうことです。

本来の支払期日よりも前に現金化するために行われ、割引手数料がかかります。

現金化できるので、仕入以外の資金として自由に使えることがメリットです。

 

しかし、不渡りが生じてしまったときに、直ちに銀行から返済を求められたり

あるいは、自分の預金と相殺されてしまう可能性があるというデメリットがあります。

 

 

裏書手形のメリットとデメリット

裏書手形は、お客様から受け取った手形を仕入などの代金の支払いに使うことです。

メリットは手元の現金が減らないことと、割引手形のように割引料が発生しないので

より多くの現金が手元に残ることです。

 

また、仮に裏書手形が不渡りになったとしても買掛金に変わるだけなので

仕入先に対して、分割払の交渉ができる余地があります。

 

デメリットは、得意先に仕入先が分かってしまうということです。

卸売業の場合、自社を挟まずに直接取引をされる可能性があります。

この場合はお客様を失くしてしまいます。

 

 

短期借入金との優先順位

運転資金の資金調達の形態として、短期借入金もあります。

では、手形の割引や裏書と、短期借入金とはどちらを優先すべきでしょうか

 

結論としては、資金調達としてより簡単な手形の割引や裏書は温存すべきである、ということです。

受取手形はできるだけ手元に残しておき、資金が不足した際に裏書で支払いをしたり、

割引で現金化できるようにしておくことが望ましいです。

 

また、急に資金が必要になった際に、借入の申し込みをしても直ちに融資が実行されるわけではないですが、

割引や裏書は即効性のある資金調達になります。

よって、資金調達方法としては短期借入金を優先すべきです。

それから、仕入先に得意先が分かってもいいのであれば裏書手形、割引手形の順です。

 

 

手形については印紙税がかかったり、現物の紛失リスクがあるということで

金融機関から、売掛金などの買取が提案されるかもしれません。

しかし、これも手形割引と同じようなものなので、上記の考え方で対応していただければと思います。

 

 

何から優先的に支払うべきか

あってはならないことですが、もし資金がどうしても回らなくなってしまった場合、

請求を受けた順に支払っていくのではなく、これも方針を作って守っていただければと思います。

 

第1順位 支払手形

一番優先的に払わなくてはいけないのは支払手形です。

不渡りは信用問題となり、倒産に直結するからです。

資金繰りが悪化しそうであれば、手形の振出先に対して支払期限の延長や長期の分割にする交渉に着手しましょう。

 

 

第2順位 給与

給与を支払うことができなければ、社員からの信用失墜を決定的にしてしまいます。

支払手形がなければ最も優先すべきものです。

(役員給与は別だと考えています。)

 

どうしてもやむを得なければ「一時的に」「一部だけ(10%~30%ぐらい)」の支払いを待ってもらうようにお願いしてみましょう。

ただし、二度と繰り返さないようにすることです。そして、できるだけリストラ等を回避すること。

このご時世、そんな話が広まってしまったら、新たに採用することはできなくなります。

 

 

第3順位 仕入代金

例えば代金の50%や、1か月分の支払いを待ってもらう交渉はできませんでしょうか。

ただし、相手先が小規模の場合には、わが社の入金遅れによって倒産しかねません。

在庫処分や売掛金回収後はすぐに支払いをすべきです。

 

 

第4順位 会社を維持するための諸経費

支払先によっては数カ月は待ってくれるかもしれません。

滞納したら即、契約解除となってしまうものは難しいですが、金額の大きいものから順に検討してみてください。

総勘定元帳から拾い出してみましょう。

 

 

第5順位 銀行への利息

元金と利息全てを支払わなかった場合、格付けは大幅ダウンするので一部だけでも支払うべきです。

 

 

第6順位 税金や社会保険料

税金や社会保険料の延滞利息は大きいですが、国税は1000万円までなら所轄の税務署と交渉ができます

ただし、差押等の強制執行にならないように分割払の交渉を検討しましょう。

 

 

第7順位 銀行への元本

元本据置の交渉は十分に可能です。

決して最優先の支払先ではないということだけでも知っておいてもらいたいと思います。

 

 

ここでは、支払うべきものの優先順位を示しています。

ですから、どうしても支払えないときは、この逆から支払いを待ってもらうようにお願いしていくことになります。

 

 

銀行への返済について、当初の条件を見直してもらうことをリスケジュール(リスケ)といいます。

返済元本の金額を変更してもらうことは資金繰りを楽にしますが、デメリットも当然あります。

まずは、追加融資や借り換えをお願いして、それでもダメならという順序になるかと思います。

 

本当に資金が回らなくなったら手遅れなので、そうなる前に着手することが大事です。

 

 

私たちが考える順序は以上のとおりです。

資金調達の優先順位、いざというときの支払いの優先順について参考にしていただければ幸いです。

また、ご自身の中でも順位を考えておきましょう。