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第90回 一社依存型収益構造からの脱却をアドバイスする

現在、どれくらいの数(人数、会社数)の取引先があるでしょうか?

そして、その取引先がわが社に与える影響はどれくらいだと考えておられますか?

 

大企業と直接または間接的に取引をしている中小企業はかなりの数があると思います。

そういった中小企業は一社依存型、あるいはそれに近い状態にあることが多いように感じます。

 

また、大企業ではなくても、少数の取引先に売上の大部分を依存している状況にないでしょうか?

もしあるのであれば、今回の内容をぜひ確認してもらいたいと思います。

 

今回は、未来会計図表とあわせて一社依存型収益構造からの脱却について説明をしたいと思います。

 

 

損益分岐点比率を使って説明する

今回も、簡単な損益計算書を使って損益分岐点比率などを計算していきます。

以下のような損益になっているとしましょう。

 

売上高 200

変動費 150

粗利益  50

固定費  45

経常利益  5

 

 

損益分岐点比率の計算

まず、損益分岐点比率を計算してみます。

損益分岐点比率は粗利益を100とした場合の固定費の大きさです。

固定費の金額を粗利益の金額で割って計算します。

 

上記の場合、固定費45÷粗利益50=90%

となります。

 

損益分岐点売上高の計算

次に計算するのは損益分岐点売上高です。

損益分岐点売上高は、利益が0円の場合の売上高の金額のことです。

現在の売上高に損益分岐点比率を掛け算すれば計算できます。

 

上記の場合、売上高200✕損益分岐点比率90%=180

となります。

 

経営安全率の計算

さらに経営安全率を計算します。

経営安全率は、会社の損益を粗利益で割って計算します。

 

上記の場合、経常利益5÷粗利益額50=10%

となります。

 

価格を一定とした場合、あと販売数量が10%ダウンしたら利益がなくなります。

それ以上ダウンしたら赤字になってしまいます。

 

今回の場合、売上高200✕経営安全率10%=20

これだけ取引が減少してしまうと赤字に転落してしまうということになります。

 

 

パレートの法則

パレートの法則をご存知でしょうか?

パレートの法則は「80:20の法則」ともいわれています。

「全体の数値の8割は、全体を構成する要素のうちの2割の要素が生み出している」という経験則のことです。

 

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、例えば自社の売上を思い浮かべてみてください。

少数のお客様によって売上の大部分が占められていたり、少数の社員が売上の大部分を稼いでいたりしないでしょうか。

 

中小企業は、上位取引先20%で総売上高の80%のシェアを占めているなんてことはよくある話です。

 

詳しく調べたいと思うのであれば、会社の販売管理システムで月々の売上高を出力して年計グラフを作ってみてください。

それが難しければ、簡易的に期末の売掛金残高の比率で計算してみてもいいかもしれないです。

 

そのシェアはどうなっているでしょうか?

パレートの法則に近い状態になっていないでしょうか。

もしそうであるなら、その危険性について考えてみましょう。

 

仮に損益分岐点比率が90%の場合に、売上高シェア50%のお客様A社があるとします。

総売上高が200であれば、A社に対する売上高は100です。

売上高が20ダウンすれば利益がなくなってしまうのですから、何らかの理由でA社の売上高が20%(=20÷100)ダウンすれば利益がなくなってしまいます。

 

営業不振だけではなく、企業の不祥事があった場合や被災してしまった場合などには売上高が丸々なくなってしまう可能性も0ではありません。

大きなシェアを占めている会社との取引がなくなってしまうと一気に会社はピンチになってしまうのです。

 

めったにないかもしれませんが、絶対にないとも言えません。

ですから、経営者としてそれに備えておくことは必要ではないでしょうか。

いきなりは難しいと思いますので、段階的に一社依存型の収益構造や売上シェアを変えていきませんか?

 

 

売上高構成を確認し、どのように変えていくかを考える

どのように変えていくか

確認した自社の売上シェアはどうなっていたでしょうか?

もし、少数の取引先の売上高が全体の大部分を占めていたとしたらその割合を下げていきましょう。

 

もし、売上シェアの大きな会社との取引がなくなれば、あっという間に赤字に転落してしまいます。

損益分岐点比率の理想が80%、経営安全率は20%なので、1社の売上高シェアを20%以下にできないかを考えられないでしょうか。

もし、その取引先の売上が0になったとしても赤字にはならないという意味です。

 

すぐには難しくとも、長い目で見てそういう状況を達成できるような計画が必要です。

 

とある芸能プロダクションは、どんなに売れっ子がいたとしても売上高の25%を依存しないようにマネジメントしている、と聞いたことがあります。

ああいう世界ですから、何かのきっかけで突然売上がなくなることに対して備えているんでしょうね。

 

それと同じような備えを私たち中小企業もできないでしょうか。

 

 

販売計画の重要性

お客様ごとのシェアを管理するため、販売計画の重要性をお伝えします。

中小企業の限られた経営資源を有効に活用するには、まず数字目標を設定します。

そして、その目標を達成するための具体的な行動計画を決定していくのです。

 

具体的にとは、5W2Hのことです。

いつ、誰が、どこへ、どんな目的で、何を、どのような方法で、金額や回数はどれくらい、という内容です。

 

 

最重点得意先と重点得意先

これらについては、得意先における当社のシェアを伸ばしていくことを考えます。

そのために、接触方法、訪問回数、担当者などの営業方法を計画しましょう。

 

安定得意先と成り行き得意先

上記の取引先とは反対に、シェアを下げていくことを考えます。

接触方法が訪問ではなく、電話やメールなどになったり、重点得意先ほど訪問ができなくなるかもしれません。

安定的に受注があるのであれば、営業方法もそれに応じたものになりますね。

 

新規開拓の大切さ

1社あたりのシェアを下げ平準化させることが大切ですが、そのためには新規開拓が非常に大切です。

これは常にやっていく必要があります。

 

 

以上、得意先別に営業方法を考え、新たなお客様を常に開拓するということを通じて特定の取引先に偏らないような体制を作っていくことを計画していただきたいと思っています。