第85回 中小企業の社長が知っておくべき試算表の見方 貸借対照表の見方を
中小企業の社長の皆さんは、あまり貸借対照表を見ていないように感じています。
ただ、実際はこの貸借対照表をみることはとても大切です。
今回は、貸借対照表の見方として、「上から下へとみる」ということをお伝えします。
貸借対照表のルールとして、左には会社の財産が載っていて、右側には負債と純資産が載っていることになっています。
ここでは左側について説明をします。
資産の部は流動資産と固定資産に分かれる
貸借対照表の左側には資産が記載されているのですが、この記載にもルールがあります。
一言でいうと、
早く現金になるものから順番に上から並んでいる
ということです。
一番上は現金・預金
自社の貸借対照表の左側(資産の部)を上から順番に眺めてみてください。
おそらく一番上は現預金となっているはずです。
ひょっとしたら、「現金」とか「現金及び預金」となっているかもしれません。
また、試算表であれば、預金については当座預金・普通預金・定期預金などの科目に分かれていたりします。
現金は、会社の金庫やレジに入っている現金そのものです。
預金は金融機関に預けている当座預金や普通預金の口座残高です。
現在は、インターネットを使って現金より便利に使える状況にありますね。
それから定期預金ですが、地元の金融機関であれば解約するのに人に会う必要があるのではないでしょうか。
そうなるとちょっと現金化しにくい資産であると言えるかもしれません。
営業債権
預金関係の次(下)も順番がある程度決まっています。
今は扱っている企業も少なくなっていますが、受取手形があり
さらにその下には売掛金があります。
受取手形は、営業取引によって受け入れた支払ってもらえる権利の証書です。
記載されている金額が期日に口座に入金されますし、支払い手段として利用することもあります。
また、金融機関で割り引いて現金化することもできます。
売掛金は、お客様に商品を販売したり、サービスを提供したときの代金を支払ってもらう権利のことです。
商売によっては、代金をすぐにもらわず請求書などを発行して入金されるまでに時間のかかるものもあります。
その支払ってもらう権利である売掛金が貸借対照表に記載されているのですが
支払ってもらえない危険性もあるので、受取手形に比べれば現金化しにくいと言えます。
棚卸資産(在庫)
さらにその下には、棚卸資産があるでしょうか。
卸売業や小売業であれば商品となっているでしょう。
製造業であれば、材料、仕掛品、製品などがあると思います。
これらは、まだ売れていないものなので、お金として回収するには手間と時間がかかります。
その他
そのほかにも、立替金、前渡金、前払金、未収入金、前払費用、仮払金、仮払消費税等などがあります。
これらは直接現金化されるものばかりではありませんが、1年以内に解消される(はずの)ものです。
以上のものをあわせて流動資産といいます。
流動資産の下に固定資産
固定資産は3つに分かれています。
その3つとは、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産です。
有形固定資産
有形固定資産は、時間の経過によって価値が下がるものと、時間の経過によっては価値が減らないものとに分けることになります。
前者が減価償却資産で、後者が被減価償却資産です。
減価償却資産には、建物や機械装置、車両や船舶、器具備品があります。
被減価償却資産には土地や骨とう品があります。
無形固定資産
無形固定資産は、ソフトウェアや借地権などの形のないものが該当します。
そのほかに、特許権やのれんなどがあります。
無形固定資産も、減価償却資産と被減価償却資産とがあります。
投資その他の資産
固定資産のうち、有形固定資産にも無形固定資産にも該当しないものがここに分類されます。
例えば
・子会社や関連会社の株式
・長期貸付金
・投資有価証券
・長期前払費用
・保険積立金
などです。
固定資産は、販売するのではなく所有して利用することによって、会社に利益をもたらすものです。
短期的ではなく長期的に保有して売上や利益に貢献するためのものです。
つまり、現金を増やすための資産と言えるので、お金を生まない資産は持つべきではないと考えています。
固定資産は、お金を払って取得するものですから、無駄なものは持たないようにした方がいいのです。
最後に
中小企業にはお金がありません。
ただでさえ少ないお金を固定資産になるべく投下しないようにする必要があります。
そのために貸借対照表を上から下に見ていきましょう。
上にあるものほど現金になりやすい資産です。
下にあるものほど現金になりにくい、なることを予定していない資産です。
なるべく下に表示されている資産の金額を減らし、上に表示されている資産の金額を増やすようにしてはいかがでしょうか。