第79回 媒体だけじゃない!中小企業の人材採用の手法について・メリットとデメリット
2023年の現状において、人材獲得についは大競争時代という人もいるぐらいで
中小企業においては大変厳しい状況にあります。
ハローワークに求人を出してさえいれば、求職者の方から「働かせてください!」と
応募がある時代はとっくに終わっているのではないでしょうか。
その状況のもと、より良い採用手法が選択できるようにいくつかアドバイスを
することができればと思います。
中途採用と新卒採用
中小企業では即戦力を求めていることが多いため、中途採用を検討することが多いです。
一方で、新卒採用に力を入れている中小企業があるのも確かです。
ここでは、新卒採用と中途採用のそれぞれのメリットとデメリットを
説明したいと思います。
「ウチは中途(あるいは新卒)採用しかしないんだ」と決めておられるかもしれませんが
色々な考え方があることを知っていただければ幸いです。
新卒(新規学校卒業予定者)採用
新卒採用とは、高校あるいは大学卒業見込みの学生を採用することですが
どういった狙いでこの方法を選択するのでしょうか。
メリットの面からそれを検討し、同時にデメリットも示してみたいと思います。
新卒採用のメリット
・1人当たりの採用単価が中途採用に比べると安い
後で説明する中途採用で必要となる費用の金額に比べると非常に安いことが挙げられます。
求人募集をする上で、大きなお金は不要です。
・教育は必要だが良い人材(素直で教育しやすい人材)を獲得できる可能性が高い
社会人としての価値観は、一度固まってしまえばなかなか変わることができないと思います。
教育は大変かもしれませんが、見返りは十分にあると言えます。
・就活時期が決まっているので計画的に採用準備・対策ができる
中途採用と違って、求職活動をするタイミングが毎年(ある程度)同じなので
準備がしやすく、ノウハウが蓄積できるのではないでしょうか。
・社内の雰囲気を活性化できる
・社内の人口構成を穏やかにしていける
平均年齢よりも若い人を採用しなければ、当たり前ですが年々平均年齢は上がっていきます。
若ければいいわけではないですが、高年齢層ばかりの組織だと
直近の退職時期が同時期になり、次の採用が大変になるかもしれません。
また、新たなチャレンジは若い人の方が取り組みやすいと思います。
新卒採用のデメリット
・採用活動期間が年々長期化している・大企業の青田買いの影響か?
少しでも早くいい人を採用しておきたいという企業側の心理でしょうか。
長期化するということはそれに携わる人の時間が多くかかるということです。
大企業であれば選任となる担当者がいるので対応ができるのでしょうが
全社員でも数人から十数人の小規模会社には辛いところです。
・待ちではなく攻めで対応しなければならず採用工数がかかる
説明会などを実施するのであれば、準備が大変です。
・期待ギャップにより早期退職の可能性
正社員として働いた経験があれば、「こんなもんだよな」というようなケースでも
初めての就職ということで、「こんなはずじゃなかった」と失望して入社後すぐに退職してしまう、
という可能性もあります。
・ビジネススキル等の基本教育を要し、戦力化までに時間とコストがかかる
それまで学生だったので、何も知りません。
一人前になるまでに時間がかかりますし、「見て覚えろ」は通用しません。
未経験者をどうやって一人前まで育てていくのかを検討しましょう。
中途採用
中途採用のメリット
・エージェントでの採用がしやすいため、採用工数は比較的かからない
新卒採用は長期にわたって様々な作業が必要になるのに対して
比較的手間がかからないというメリットがあります。
募集、応募、面接、通知とシンプルです。
・求めているスキルを即戦力で採用できる
同じ業種で働いていたのであれば、多少やり方などは違うでしょうが
短い期間で、大したトレーニングも必要なく戦力となってくれるでしょう。
・他社を経験しているため自社にはない発想やノウハウを持っている可能性がある
仮に業種が違ったとしても、社会人として蓄積した発想やノウハウは
わが社に新しいものをもたらしてくれます。
私たちも、様々な業界から中途採用を受け入れてきましたが
それぞれの業界ならではのノウハウを発揮してくれることが多いです。
・戦力化までのコストや時間を抑制できる
中途採用のデメリット
・1人あたりの採用コストが高い
手間がかからない分だけコストはかかってしまいます。
媒体を利用する場合、スカウトや紹介でも同様です。
これからの時代は中途採用であってもコストがかかるものと考え
人材採用費という未来費用を予算しておくことが大事だと思います。
・ミスマッチ・採用方針と合わない等による早期退職の可能性
新卒採用は、未経験から来るミスマッチですが、
中途採用はそれまでの職場で培ってきた価値観との相違から来る
ミスマッチによって早期退職の可能性があります。
採用時の面接では、お互いの価値観をすり合わせておく必要がありますね。
採用手法の特徴とポイント
ここからは、採用手法について
・人材紹介
・スカウト
・リファラル採用
の3つを紹介させていただきます。
全部知ってるよ、という中小企業の社長様は素晴らしいですね。
人材紹介
ひとつめは人材紹介です。よく聞かれるかもしれません。
企業(自社)が人材紹介会社に「こういう人材が欲しい」と希望する人材を伝え、
その人材紹介会社が自社の登録者の中からマッチする人材を紹介してくれる、というサービスです。
中途採用では最も主流な方法のひとつといわれるようになっています。
必要となる経費は仲介手数料で、採用が成功した場合に発生します。
金額の目安は理論年収の3割から4割となっているようです。
人材紹介のメリット
・完全成功報型なので初期費用がかからない
・採用工数を削減できる・急な増員に対応可能
・ターゲットに絞り込んだ採用が可能
・自社に関心がなかった人材も紹介してもらうことができる
・応募者の意見を正確に知ることができる
人材紹介のデメリット
・1人当たりの採用費用が高い
・紹介会社に登録している人材としか出会えない
報酬の金額が大きく、「都会の会社はすごいなあ」と思っていたのですが
最近は、身の回りでも利用したという話を聞くことがあります。
大企業だけ、都会だけの採用方法ではなくなっているようです。
スカウト
企業が求職者を直接スカウトし、人材を獲得する方法です。
スカウトとは、求職者が企業を選ぶ方式ではなく、
企業側から採用したい求職者に対して個別にメッセージを送ります。
そして、メッセージを受け取った求職者が応募を希望することで選考が進んでいきます。
ミスマッチを減らすことができ「いい会社があったら転職したい」
と考えている転職潜在層へのアプローチが可能とされています。
報酬の例
掲載課金型 年80万円~
成功報酬型 1人60万円~
スカウトのメリット
・自社に合った人材を狙ってスカウトできる
求人媒体や紹介で募集をかけようとすると、企業側が良いと思った人材から
応募があるとは限りません。
スカウトであれば企業側からアプローチをするので、求職者に対して
(自社に興味がないとしても)必ずメッセージを伝えるチャンスが得られることになります。
・工数を大幅に削減できる
スカウトのデメリット
・多くの人材を集めることには不向き
基本的には採用の担当者と求職者の1対1でのやり取りになるので
多くの求職者を集めるのは大変だと思います。
ただ、少人数の採用を考えているのであればデメリットではありません。
・即効性がない・探すのが大変
・自動マッチングにずれが出る可能性もある(自動マッチング・配信型の場合)
リファラル採用
あまり聞いたことがないという人も多いかと思いますが、
人材採用難の影響もあり、新しい採用手法だということで最近注目され始めている
ということです。
リファラル採用はまず、自社の社員さんに対して「求める人材の要件」を伝えます。
そして、適性のありそうな友人や元同僚などを紹介してもらうことで、
質の高い候補者を集める方法です。
リファラル採用に必要な経費としては
・紹介報酬制度(数万~30万円程度)
必ずしも紹介報酬を社員さんに支払わなければいけないということではありませんが
社員さんにも紹介するメリットがないとなかなか紹介もしてもらえないのではないでしょうか。
・会食費用制度(1,000~5,000円程度)
応募者と食事をするための費用です。
心理的なハードルを下げるために会食を利用します。
・リファラル採用ツール導入費(月5万円、導入費10万円など)
個人的に使っているSNSと連携して紹介をしやすくしたり
応募情報を管理したりするツールを利用するための費用が必要です。
ツールごとに料金体系が異なるので、興味があればいろいろチェックしてはいかがでしょうか。
リファラル採用のメリット
・採用にミスマッチを防げる・事前に説明してもらえる
自社で働いている人に紹介をしてもらえるので
よりリアルな内情を事前に説明してもらえるでしょうし
また、価値観や仕事内容がマッチする友人に声をかけてもらえることでしょう。
・コストが安い
人材紹介やスカウトでは多額の費用がかかりますし、
媒体に掲載しようとすると、採用ができなくても費用が発生します。
システムを使わないのであれば大変安上がりになります。
・紹介者が採用者のフォローをしやすい
もともと関係が近しいので、会社においても相談しやすくアドバイスしやすいでしょう。
より親身になってフォローしてもらえることが期待できます。
・一緒に働きたい人を紹介してくれる
リファラル採用のデメリット
・紹介の責任を負う
・採用担当者のスキルが必要
・組織的に活用ができるようになるまで時間がかかる
これいいな、と思うような採用手法はありましたでしょうか。
それぞれの採用手法の名前で検索して詳しく調べてみてください。
報酬の目安も記載していますが、変更する可能性もあります。
ここでは3つの手法について紹介しましたが、いずれも少なくないお金が必要です。
それに、これらの手法を用いないと採用が絶対できないわけではありません。
偶然に知人が紹介してくれたり、何かの拍子に連絡があったりと経費を使わずに
採用ができる可能性は大いにあります。
ただ、選択肢の一つとしてこれらの手法が使えるように
どういった手法があるのか、どれくらいの費用がかかるのかを
知っておいてはいかがでしょうかということです。