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第64回 昇給をする際には、損益のシミュレーションだけではなく財務状況も確認しましょう。

 

消費者物価指数

消費者物価指数をご存知でしょうか?

総務省統計局によると

「消費者物価指数は、全国の世帯が購入する各種の財・サービスの価格の平均的な変動を測定するものです。

すなわち、ある時点の世帯の消費構造を基準に、これと同等のものを購入した場合に必要な費用がどのように変動したかを指数値で表しています。」

とのことです。

 

総務省統計局HPの「調査の結果」で、毎月下旬ごろに前月分が公表されています。

https://www.stat.go.jp/data/cpi/index.html

 

この文章を書いているのが2023年4月中旬なので、3月24日に公表された2月分が最新のものとなっています。

次回は、4月下旬に2023年3月分が公表されると思います。

 

内容を見てみると、総合指数が

・2020年を100として104.0

・前年同月比は3.3%の上昇

と書かれています。

 

私たちの生活費が3年前に比べて4%、前年に比べて3.3%高くなっています。

ということは、この物価上昇に見合った賃金上昇がないと、その分社員さんの生活は苦しくなる、貧しくなるということです。

つまり、私たちが中小企業経営者として人を大切にする経営を実践しようとする場合、昇給をしなくてはならないということではないでしょうか。

 

 

昇給こそ未来費用

もしウチが昇給をしなかったら?とイメージしてみてください。

今後の採用を考慮して、賃金が高くないと採用市場で戦えない可能性があります。

また、給与が上がらないと現在の社員さんが転職してしまう可能性があります。

その意味でも昇給は必要だと思いませんか?昇給こそ未来費用なんです。

 

そのように大切な昇給ではありますが、粗利益が増えないと払えません

付加価値アップのための未来費用が必要です。

付加価値アップにより、価格決定力を持つことが重要です。

商品開発費、研究開発費、などで商品力・技術力・サービス力を高めましょう。

 

 

財務状況で昇給の可否を検討しよう

昇給が損益に与える影響については、前回検討してみました。

今回は損益ではなく、財務状況によって昇給ができるのかどうかを検討してみたいと思います。

 

簡単に言うと、

財務状況が良ければ昇給はぜひしてください、ということですし

財務状況が悪ければ昇給は難しいですよ、ということです。

 

 

現金預金が多く、借入金がない、あってもごくわずかの場合

下の図を見てみてください。

会社の貸借対照表を図形にしたものです。

それぞれの貸借対照表の左側が資産で、右側が負債・純資産を示しています。

AもBも現金預金をたくさんあることが表現されています。

Aについては借入金はありません。無借金です。

Bには借入金がありますが、ごくわずかです。

つまり、いずれの貸借対照表も財務としてはとてもいいということです。

 

この場合、昇給によって利益が多少減少しても問題ないと私たちは思っています。

社員さんたちに対する昇給は未来費用であり、必要なものです。

財務がしっかりしていれば、短期的に利益が出ていなくても耐えることは十分にできます。

 

それよりは、長い目で人の問題に取り組む方がずっと大切だと考えています。

冒頭でもお伝えしたように、賃金が高くないと今後の採用市場で戦えない可能性があります。

ぜひ明るい未来のために昇給を考えてみてください。

 

また、昇給をしたのであれば付加価値のアップが必要で、付加価値アップのためには未来費用が必要です。

更なる差別化で商品力・技術力・サービス力を高め、価格決定力をもつために研究開発などをして将来的な増収増益を目指しましょう。

 

 

借入金がない、あるいは少ないが現金預金も極端に少ない場合

今度は下図を見てください。

Cは借入金がない状態で、Dには少しですが借入金がある状態です。

ただし、いずれも現預金が非常に少ないということが分かります。

この場合の昇給はどのように考えたらいいでしょうか。

この場合、昇給をしてもいいとは思いますが、その前に資金調達をして資金をしっかりと持つことが先決です。

 

借入をすることに対して罪悪感というか、拒否反応がある会社はこのような貸借対照表になりがちです。

しかし、「借入金は利益の前借り(前倒し)」ということもできます。

事業活動をする上で、採用であったり設備投資、広告宣伝や商品開発などでお金をたくさん使うことがあると思います。

それらは、いったいなぜ行うのか?それは利益を出すためです。

 

だから、手元資金が足りないときは「利益を前借り」してお金を調達します。

その後利益を出して、その中から借入金を返済していけばいいのです。

 

 

お金は少なく、借入金が多い場合

最後のEは現預金はあまり持っておらず、借入金がとても多い会社です。

本来であれば、もっと預金を増やし、借入を減らすということを考えるべき財務状態です。

この状態で、昇給をしてしまうとどうなるでしょうか。

 

借入金の総額がかなり大きくなっているということは、毎月の返済額もかなりを大きいと予想できます。

現在の収益で返済していけるのかと言えば厳しいでしょう。

ここから更に昇給をして固定費を増やしてしまうと、さらに厳しい状態になるのは目に見えています。

 

確かに昇給は必要です。

しかし、資金を早急に安定させてから昇給に踏み切るべきでしょう。

順番を間違えないようにしてください。

 

借換えにより毎月の返済額を減らすことや、新たな資金調達によって手元資金を増やすことを検討します。

それでも資金繰りが厳しければリスケジュールも視野に入れる必要があります。

 

 

以上、今回は昇給を検討する場合には、損益シミュレーションと共に財務状況の確認も必要ですということでした。

参考にしてみてください。