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第60回 決算前検討会では当期着地だけではなく、来期の利益計画も作成してみましょう

決算前検討会では来期の利益計画も作成する

私たちは、決算前検討会を実施する際には決算の着地を予測してお客様と共有するようにしています。

そのとき、当期の着地だけではなく来期の利益計画作成のお手伝いをしたい、と考えています。

 

当期の着地を知って安心していただくだけでなく、来期の計画を立てて意欲的になっていただきたいからです。

 

今回は、その来期の利益計画に作り方ついて考え方をお伝えしたいと思います。

 

 

来期の利益計画作成の考え方

目標とする利益から逆算するという考え方

当社には、来期いくらの利益が必要なのか?という考え方です。

 

損益計算書の一番下の数字である利益を一番初めに決定します。

そこからさかのぼって各種の数字を計算して、損益計算書の一番上の数字である売上高を逆算して決定します。

ということで、私たちは「下から作っていく」などと言っています。

 

では、どれだけの年間利益が必要なのか?ということですが、会社の状態や経営者の考え方によって様々な基準があります。

 

①利益で借入金の年間返済額をまかなえるか

借入金の返済には、それと同額以上の税引後利益が必要と考え目標利益を決定します。

返済額によっては、かなり金額が大きくなることがあります。

借換えや追加融資も検討しながら適切な水準で目標利益を決めていくのがいいと思います。

 

その他の検討事項としては

減価償却費を返済原資に含めるか、含めないか

繰越欠損金があるのか、ないのか

といったものがあります。

 

②社員一人あたり〇万円の経常利益を目標とする

返済額を基準にする場合、借入金の返済がなかったり、ごくわずかであれば目標利益がとても小さくなってしまいます。

そんな企業であれば、社員一人あたりの経常利益を設定して、それによって会社の目標利益を決定するという考え方もあります。

 

中小企業であれば、ひとりあたり100万円とか200万円もあればかなりの優良企業と言えるのではないでしょうか。

あるいは、過去の実績をたたき台にして、頑張れば達成できるという水準を目標にするのもいいかもしれません。

 

③損益分岐点比率〇%を目指す

未来会計図表をつかって数字の勉強をしていただく際に、「損益分岐点比率」を説明させていただきます。

その損益分岐点比率は、目標90%・理想80%とお伝えしています。

来期の固定費を見積もれたら、損益分岐点比率が90%(あるいは80%)となるような粗利益額を算定し、売上高まで逆算するという考え方もできます。

 

 

売上高から計算していくという考え方

これは多くの企業で採用されているであろう考え方です。

損益計算書の一番上に記載されている売上高から順に利益まで計算していくことになります。

当期の売上高をたたき台にして作成していくので、実態に即したものになるでしょう。

私たちは「上から作っていく」などと言っています。

 

ただし、「この売上だったら、この利益になるだろう」という予測のようなものとなってしまう可能性もあります。

最終的に計算された利益は、会社を存続させるために必要な金額となっているのか?を検討しましょう。

 

売上を増やして行く計画を立てる場合、単価をアップするのか、数量をアップするのかを検討する必要があります。

単価をアップする場合には、粗利益率も変化します。

どのような粗利益率に設定するのか、値上戦略と併せて考えていきます。

 

 

いずれにしても販売計画は必ず作成する

以上のように、上(売上高)から計算するとしても、下(経常利益)から逆算するとしても絶対的に必要なものがあります。

 

何だか分かりますか?

 

それは販売計画を作成することです。

利益計画の肝と言ってもいいかもしれません。利益計画の数字にリンクした販売計画を作成することです。

 

目標となる売上高をひとつの数字としてみるのではなく、

・商品別

・担当者別

・お客様別

によって分解して作ります。そして、月別に展開して毎月チェックができるようにしておくのです。

 

そして、ただ数字を作るだけではなく、そこから具体的にどうやって売上を作っていくのか?

・ABC分析によって、重点的に頑張る商品やお客様を決定する

・ランチェスターの弱者の戦略によって、どういう戦い方をするかを具体的に決定する

 

 

目標とする貸借対照表から作成する

経常利益から逆算して当期の利益計画を作成する場合、来期のことしか考えないのではなく

中期的に会社の貸借対照表をどうしたいか、を設定してそれを達成するには?という考え方もできます。

ちょっと考え方のレベルが高くなります。

 

現在の貸借対照表を見ながら

有利子負債の金額以上の現預金を持つ(これを私たちは実質無借金と呼んでいます)には?

自己資本比率を30%(目標)あるいは60%(理想)とするには?

・総資産に占めるキャッシュの割合を30%以上にするには?

 

売上高が増える計画を立てると運転資金も大きくなり、キャッシュが思ったより増えないことも考慮しながら

どれくらいの利益が必要で、そのうち来期にはいくら稼ぐか?ということを決定します。

 

その利益をもとに下から逆算で計画を作っていきます。

 

 

人件費から逆算する

どれくらいの人件費を払いたいか?

そこから必要粗利益額を計算するというのは計算自体は簡単ですが、発想としてはかなりレベルが高いと言えるのではないでしょうか。

もちろん社会保険料の金額も計算に含めてください。

 

この人件費を払うためには、どれくらい稼がなくてはならないのか?という発想はかなり大変だと思います。

そこから、どんな商品を、どんなお客様に、どう売っていくのかを決定しなければならないからです。

商品を売って得た利益を分配するという従来の考え方とは全く逆のアプローチとなります。

 

しかし、社員さんを大切にするという観点からは払いたい人件費をまず決定するというのは

非常に理にかなっていると言えます。

 

 

まとめ

いずれの考え方が適しているのか、というのは経営者の考え方や会社の状況によっても変わってくることでしょう。

どれが正しいとは言えないので、まずはいろいろな方法で利益計画を作ってみることです。

 

現在の数字とどれくらい乖離があるのか?今期よりもどれだけ頑張らなければならないのか?

達成は可能なのか?

 

色々な方法、考え方で作成された利益計画を当期の実績(着地予測)と比較してみてください。

そして、「これだ!」というものを来期の計画として決定します。

もちろん決定するのは他の誰でもなく経営者本人です。

 

どの利益計画を採用するかを決定したら、その計画にリンクした販売計画を作成します。

そして、どうやってその売上を作っていくのかを決定します。

もちろんそれを毎月チェックしていくことが一番大事です。

 

ぜひやってみてください。