第52回 利益感度分析について~どこに手を打つと利益が出るのかを分析する~
利益感度分析とは
今回は、どこに手を打てば利益が出るのか?について明確に答えを出すための分析手法についてお伝えします。
その名も利益感度分析といいます。
会社の損益に影響を与えるのは、変動損益計算書でいうと
価格・販売数量・変動費・固定費
の4つだけです。
これらそれぞれの要素がどれだけ利益に対して影響を持っているのかを%で数値化することにより分析をします。
それがこの利益感度分析です。
利益感度分析のやり方
では、具体的な方法です。
自社の実績を基に計算をしますので、その数字が必要となります。
決算書でも試算表でも結構ですが、変動損益計算書の形式に組み替えてやる必要があります。
それができましたら準備はOKです。
価格の利益感度
いくら価格を下げると、利益がゼロになるか?(黒字の場合)
いくら価格を上げると、損失がなくなるか?(赤字の場合)
価格の利益感度(%)=経常利益(経常損失)÷売上高
これは売上高経常利益率ともいいます。
販売数量の利益感度
いくら販売数量が減ると利益がゼロになるか?(黒字の場合)
いくら販売数量が増えると損失がなくなるか?(赤字の場合)
販売数量の利益感度(%)=経常利益(経常損失)÷粗利益額
これは、黒字の場合は経営安全率ともいいますし
赤字の場合は、売上必要倍率ともいいます。
変動費の利益感度
いくら変動費が増えると利益がゼロになるか?(黒字の場合)
いくら変動費が減ると損失がなくなるか?(赤字の場合)
変動費の利益感度(%)=経常利益(経常損失)÷変動費
固定費の利益感度
いくら固定費が増えると利益がゼロになるか?(黒字の場合)
いくら固定費が減ると損失がなくなるか?(赤字の場合)
固定費の利益感度(%)=経常利益(経常損失)÷変動費
いずれの要素も計算ができたら、今度はその数字を比べてみます。
そして、その数字が低い順に利益感度が高いということになり、利益を出すために手を打つべき順番ともいえます。
数字が低い方が感度が高い、というのに違和感がありますでしょうか?
そんなときはこう考えてみてください。
例えば、価格の利益感度が5%、販売数量の利益感度が15%だとします。
それは、価格をあと5%だけ下げたら利益がゼロになる、ということです。
そして、販売数量は15%も減らさなければ利益がゼロにならない、ということです。
影響する金額は同じでも、少しの変化で利益がゼロになる価格に手を打つ方が効果的です。
これを価格の方が利益感度が高い、と言い表しています。
ただ、どんな場合であっても常に価格の利益感度は一番高いです。
損益計算書の金額で一番大きいのは売上高だからです。
利益感度分析の活用
以上の分析により、自社の利益構造が分かってきます。
ウチはどこに手を打てば利益が出やすいのか?という問いに答えることができます。
では、その通りに手を打っていくのか、という話ですが、そんなに単純ではないですよね。
ひとつは、利益を出しやすい順と手を打ちやすい順はおそらく違うからです。
もうひとつは、現状では安易に固定費や変動費を削減すべきではないからです。
変動費については、原料の高騰により材料費や商品仕入れは以前のようにできなくなっています。
また、固定費には人件費や未来費用が含まれています。
価格のアップや、販売数量を増やしていくには、未来費用が必要不可欠です。
これからの中小企業は人を大切にする経営を実践していくには人件費を削るわけにはいきません。
ただし、不要なものは思い切って削減する必要があるとは思いますが・・・
おわりに
ABC分析やランチェスター法則などの活用によって戦略を決定し、利益計画と共に販売計画を策定していきます。
販売計画は、商品別であったり、担当者別、店舗別、お客様別などで作成して、月別に展開します。
それを毎月の財務会議で、月次決算書を使って追っていくことが大事ではないでしょうか。
分析をするだけで終わるのではなく、どこに手を打つべきかを決定して具体的な行動計画を立て、実際に行動して数字が伴っているかを細かくチェックしていくことをやっていただきたいと思っています。