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第37回 原価高騰の中、いくらの値上げをすれば利益を確保できるのか?

原材料の高騰が続いています。

理由はいろいろありますが、あらゆるものの値段が高騰し、会社の収益を圧迫しています。

 

今まで中小企業の経営者様たちは、原価を抑えるために大変な努力をしてきましたが、もうそういう段階ではなくなってきていると思います。

 

いよいよお客様に対して、値上げを申し出なくてはならない・・・

 

 

そこで問題になるのが、いったいいくら値上げをすれば現状の利益を確保できるのか?ということです。

今回はそれについて説明をさせていただきます。

ぜひとも参考にしてみてください。

 

とはいっても、考え方としては非常にシンプルです。

高くなった分だけ値上げをすれば利益は確保できます。非常にシンプルです。

 

しかし、製品や商品の価格を具体的にいくら値上げするかという計算をするにはどうすればいいでしょうか?

 

 

損益計算書の金額を確認してみてください。

仮に損益計算書が以下の通りだとします。

これは通常の損益計算書ではなく、経費を変動費と固定費に分類している変動決算書を使って説明をしています。

 

売上高 10,000

変動費  4,000

粗利益  6,000

固定費  5,000

利益   1,000

 

変動費のうちすべてが値上がりするのではないと思いますが、単純化のため変動費すべてが30%値上がりするとします

すると

4,000(変動費)×30%(増加割合)=1,200

で1,200の変動費アップだということになります。

この分を価格に転嫁すればいいのです。

 

販売数量も固定費も変わらないという前提ではありますが、現在の売上高10,000に対して1,200の値上げをすれば粗利益を維持できます。

 

値上げ後の数字の推移は

売上高 10,000 → 11,200

変動費  4,000 →  5,200

粗利益  6,000 →  6,000

 

原価高騰前と変わらない粗利益を確保できることが分かります。

 

 

ただし、実際には変動費だけではなく、固定費もアップするでしょうから、それも考えなくてはなりません。

 

仮に固定費が500アップするのであればさらに500の値上げをすれば粗利益が500アップし、最終利益が維持できます。

 

その際は、値上総額は1,200+500=1,700となり

1,700÷10,000=17%ということで、現在の販売価格を17%アップすることができ、かつ現在の販売数量を維持することができれば現在の利益を確保することができます。

 

値上げのお願いをするのも大変ですし、値上げ後の販売数量を維持するのも大変だとは思いますが、それをしなければ会社を維持するのが難しくなってしまいます。

 

ちなみに、販売価格を維持して販売数量を頑張って増やす方針であれば、どれだけ増やせばいいかもシミュレーションできます。

 

この例題でしたら、変動費率が40%から52%にアップします。

粗利益率は48%にダウンするということです。

そして、固定費が5,500にアップしたとすると、利益1,000を維持するためには6,500の粗利益を稼ぐ必要があります。

 

必要売上高は必要な粗利益額6,500を粗利益率で割って計算します。

6,500÷48%≒13,541となり、いまよりも販売数量を約35.4%アップさせればいいことが分かります。

 

このように、販売価格をいろいろ変えて、どれだけ売ればいいのかを計算することもできます。

 

いずれにしても簡単ではないですが、それを避けては会社を維持することは難しい状況です。

やみくもに頑張るよりは、まずは理論値を算出してそれから目標を持って行動するほうが結果に結びつきやすいのではないかと思います。

 

物価の高騰は近年経験することがなく、値上げというのは本当に大変な仕事だと思いますが、絶対に必要なことです。

 

こちらも参考にしてみてください。

値上げによる客数減少はいくらまでなら耐えられるのか?

第56回 値上による客数減少はいくらまでなら耐えられる?自社の数字でシミュレーションを

 

私たち会計事務所としてご協力できることは少ないとは思いますが、こういった数字の方面から中小企業の経営者様のお役に立てればと思います。

ここでご紹介した変動損益計算書は、私たちが提供する月次決算書で毎月確認することができます。