第31回 中小企業の社長が決算書で見るべき数字とその目安①【損益分岐点比率】
中小企業では法人税や消費税の申告をするために決算書を作成します。
その決算書には様々な情報が記載されていますが、多くの社長様は「いくら儲かったか」という損益計算書の売上高や当期損益しか見ていないように感じます。
ひょっとしたら全く見ていない方もおられるかもしれません。
どういうところを見ればいいのかを教えてくれる人がいないということでしょうから、顧問税理士としてしっかりとお伝えしていきたいと思っています。
今回は、
①こういう数字を見たほうがいいですよ、という分析(目安)
②この数字を良くするにはこうしたらいいですよ、という対策
をお伝えします。
そして、一番大事なのは
③その結果、こうなりますよ、という効果
ではないでしょうか。
「○○率がいいですね」「●●率が△%よくなりました」とだけ言われてもピンとこないですよね。
その数字がよくなったら会社はどう変わるのかをイメージしてもらえるようにお伝え出来たらと思います。
損益分岐点比率
今回は損益分岐点比率をご紹介します。
損益分岐点比率とは会社の収益性を示す指標です。
(収益性を示す指標として「売上高経常利益率」というものがありますが、これは分母を売上高として計算することとなっていて、業種や業態が違うと目安となる数値が示せません。
例えば、90円で購入して100円で販売するという薄利多売の事業だったとすると、売上高経常利益率は10%よりも良くなることはありません。
売上高が増えることによって限りなく10%に近づくのでしょうが、売上高と経常利益とを比較するのは生産性・収益性の指標としてちょっとどうなのかなと思っています。)
算式は
損益分岐点比率(%)=固定費÷粗利益額
固定費も粗利益額も損益精算書には記載されていない項目です。
そもそもそこから計算しなければならないので、ちょっと計算のハードルが高いかもしれません。
売上高から経常利益を引いたものが会社の費用ですが、その費用を二つに分けます。
変動費と固定費です。
変動費とは売上数量の増減に伴って増減する経費。
固定費はそれ以外の経費。
そのようにわが社では定義しています。
売上高から変動費を引いたものが粗利益額となります。
粗利益額から固定費を引いたものが利益になるわけですから、粗利益額よりも固定費の方が大きいと赤字になってしまいます。
ということは、算式を見て分かるように
損益分岐点比率(固定費÷粗利益額)は赤字だと100%よりも大きくなり、黒字だと100%よりも小さくなります。もちろん小さければ小さいほど収益性が高いと言えます。
損益分岐点の目安
60%未満 評価SS 超優良企業
60%~80% 評価S 優良企業 抜群の競争力がある
81%~90% 評価A 健全企業 優秀な競争力がある
91%~100% 評価B 損益分岐点企業 普通の競争力がある
101%~200% 評価C 赤字企業 事業存続に問題あり
201%以上 評価D 倒産目前企業
この数値を良くするためには固定費を下げるか粗利益額を上げるかということになります。
しかし、中小企業は元々無駄な固定費を使っていることはあまりなく、簡単に下げられるものではありません。
やはり粗利益額をどのように増やして行くかをきちんと計画立ててそれを実行していくことが大事だと思います。
自社にとって目標となる損益分岐点比率を定め、それに対して粗利益額はいくら必要になるのか、そのためには何人の人員が必要となるのか、どんな商品を売っていくのか、どう売っていくのか、誰に売っていくのか、考えることはたくさんあります。
当社では、赤字のお客様はまず黒字を、損益分岐点比率が90%台のお客様には90%を、80%台のお客様には80%を目指されてはいかがですか、とご提案しています。
この数字が低いということは、その分売上が減少しても赤字にならないということであり、多くの利益を会社に蓄積できるということでもあります。
利益は借入金の返済原資として社内に蓄積することや、頑張ってくれた社員さんに決算賞与を支給することもできます。未来に備えて設備投資や研究開発費として使うこともできると思います。
売上高や利益の絶対額だけではなく、損益分岐点比率を計算し自社の収益力を振り返ってみてください。そして、目標数値を定めて計画を立ててみてはいかがでしょうか。
きっと会社がよくなるはずです。