第24回 決算で大逆転をおこさないために期中でやっておくべきこと
せっかく毎日現金出納帳を作成して、売掛金や買掛金を把握していたとしても、それが会計に反映していないと全く意味がないものになってしまうことがあります。
決算前には決算着地がどれくらいになるかを検討するのですが、きちんと会計がされていないデータに基づいて試算すると「利益が出ているはず」と思っていたのに、実際に決算整理をしてみると赤字だった、あるいはその逆だったということもありえます。
売上や仕入が現金主義になっている
面倒だという理由で、現金商売でもないのに入金があったときに売上を計上したり、仕入代金を支払った時に仕入を計上したりしていないでしょうか(現金主義と言います)。
収益や費用は、現金が出入りしたときではなく取引が発生した事実に基づいて認識する(発生主義と言います)のが正しいので、決算ではそれを訂正します。
現金の出入りで収益を認識してしまうと、当期の1カ月目に入金される前期の売上高が当期の売上高として計上されてしまいます。仕入も同様です。
そのズレを決算で訂正するので決算前と後とで数字が大きく異なってしまいます。
売上や仕入は発生主義で計上する
在庫を把握していない
100個の商品を仕入れて、そのうち60個が売れた場合、会計上は残り40個については経費になりません。
会計では、残っている40個を「棚卸資産」として、売上原価からマイナスすることで調整しています。
これも、面倒だということで期中はその処理をせず、決算時だけそのようにされる中小企業も多いと思います。
この例のように、棚卸資産を毎月計上していないと60個の売上に対して仕入が100個計上されたり、逆に売上100個に対して仕入が60個しか計上されず、粗利益額や粗利益率が大きく狂ってしまい、決算整理において大幅に粗利益の数字が変わってしまうこととなります。
在庫は(概算でもいいので)毎月計上する
減価償却費を決算で一度に計上する
減価償却費を決算でまとめて計上していないでしょうか?
税務上、減価償却費は年間に計上できる金額が決まっており、その金額は事前にわかっているはずなので、12等分して毎月計上します。
これを面倒がって決算時に一度に計上しようとすると、決算で大きな経費がいっぺんに発生してしまい損益が大きくぶれることになってしまいます。
年間120万円の減価償却費を計上できるのであれば、毎月10万円を計上するのか、あるいは決算で120万円を一度に計上するのかということです。
もちろん毎月計上しておくと決算の予測がつけやすいです。
減価償却費は12分の1を毎月計上する
賞与を払った時に計上する
賞与を払った月は経費が多額になってしまい、その月だけ赤字になってしまうことがあります。
賞与についても、年間の予算が決まっているのであれば年間の支給概算額を12で割って毎月引き当てておきます。
そして、実際に支給したタイミングで戻し入れれば毎月の経費は平準化するはずです。
(概算額と異なる金額を支給した場合は、その異なる金額だけ支給月に影響します)
決算月に賞与を払う場合、一度に経費が発生してしまい、これも数字を大きくブレさせてしまう要因の一つになります。
賞与は概算額・年間予算額の12分の1を毎月計上して、支払時に戻し入れる
社会保険料が未払いになっている
社会保険料は当月分を翌月の末日に支払うので、必ず一カ月分が未払いになっています。そのうち会社負担分は経費にできます。
また、月末が土日祝の場合は金融機関が休みなので、支払いが翌月になってしまいます。
その場合、翌月には支払うからといって何も処理しないでおくとその月の社会保険料は計上されず、その次の月は2回払うので社会保険料の金額が倍になります。
社会保険料は、給料の約15%と比較的金額が大きいので、これもちゃんと計上していないと損益が大きくぶれます。
社会保険料が未払いになっていても計上する
以上のような項目は、期中に処理しなくても決算で処理するので申告自体はできてしまいます。
手を抜こうと思えば手を抜けるところなんです。
しかし、最低でも以上のことをしっかりとやっていくことで、期中の損益を正しく把握することができるのです。
中小企業経営者の正しい判断は正しい数字に基づくものだと考えています。
逆に、誤った数字からされる判断は、誤った判断になってしまうのではないでしょうか。
期中の処理について手を抜かないことで今期の決算賞与はどれくらいにしようか?とか、次はどんな手を打っていこうかという前向きな判断の基準となるでしょう。
そうすればイメージ通りの賞与を支給することができるかもしれませんし、正しい判断によって業績が向上すれば、社長や社員さんの給与を長期的に上げていくことも可能になります。
正しい決算のためとか、税務申告のためとかではなく、一生懸命に働いてくれている社員さんとその家族のためにも、決算整理で大逆転が起きないように月次の処理に取り組まれてはいかがでしょうか。