第8回 売掛金を持たないと資金繰りにどう影響するのかを考える
前回は、中小企業は貸借対照表にはできるだけ現金以外の資産を持たないようにした方が
資金繰りや、新しいことにチャレンジする上で有利ですよとお伝えしました。
今回は、売上債権について説明をします。
売掛金とは
売掛金というのは、ツケで販売した場合に代金を受けとる権利のことです。
会計上、売上はお客様に商品を販売した時点で認識します。
お金をもらったタイミングではありません。
例えば、今月商品を販売して請求書を発行し、代金は翌月回収したとします。
月末には回収していないわけですから、その月の貸借対照表には未回収の売掛金が
記載されることとなります。
損益計算書に売上高は計上されていますが、代金は回収されていません。
これが、利益が出たからといって現金が増えるわけではないことの理由のひとつです。
売掛金は永久に回収できない
翌月回収されるからいいじゃないか、と思われるかもしれません。
しかし、翌月になると新たな売上が計上され、未回収の売掛金が発生します。
このように、売掛金は商売をやめない限り永久に回収できないのです。
同じ売り上げでも回収条件で資金繰りが変わる
毎月コンスタントに100万円の売上が上がる会社A社B社C社D社があるとします。
A社は、商品の引き渡しと同時に現金決済をしています。
B社は、掛け売りをしていてその月納品分の代金を翌月に請求し、翌月中に回収しています。
C社は、B社と同様掛け売りをしていますが、代金は3カ月の手形で回収しています。
D社は、注文があったら代金をいただき、それから納品をしています。
この回収条件で起業し、1年が経過したときの回収状況を見てみます。
売上高は4社とも1200万円です。
A社は、売上と同時に入金があるので、その1年間の入金は1200万円です。
貸借対照表には売掛金が表示されていません。
B社は、売上の翌日に入金があるので、最終月の売上代金は決算日現在では回収できていません。
1年間の入金は1100万円で、貸借対照表には売掛金100万円が計上されます。
C社は、売上の翌月に手形による代金の回収があり、さらに3カ月後にならないと
手形が決済されません。
4月の売上は5月に手形で回収され、3カ月後の8月にやっと代金が回収されます。
売上は1200万円ですが、決算前の4カ月分の売上は期末において回収されておらず
800万円のみが入金されています。
貸借対照表には売掛金100万円と受取手形300万円が表示されています。
D社は、決算の翌月の売上代金をすでにいただいているとすると
売上高は1200万円ですが、入金は1300万円あるかもしれません。
貸借対照表には売掛金は表示されず、売掛金のマイナス項目とも言える
前受金が100万円計上されています。
売上高が翌期以降も変わらなければ、以後は4社とも1年間の代金回収額は同じになります。
しかし、売上高が増加すれば売掛金も増えるので、また回収額に差が生じます。
(逆に売上が減少したときには、BやCに多く入金されます)
売上債権と仕入債務のサイトの負け部分を金融機関からの借入金に頼っている
中小企業は多いと思いますが、売上債権を少なくするということは
この借入金を少なくすることでもあります。
貸借対照表に計上される売上債権をできるだけ少なくすることは
残念ですが社員さんたちが考えてくれることはありません。
中小企業の貸借対照表は社長が作るものですから、売上代金の回収については
社長がその方針を考え、社長がその態度を示すべきです。