C

o

l

u

m

n

経営コラム

第39回 賞与引当金の計上額を賞与としてそのまま支給しますか?~賞与支給の可否判断~

2022.07.04 | 給与・賞与

ちょっと意識の高い会社であれば毎月賞与引当金を計上しているかもしれません。

年に2回の賞与のために毎月引当金を計上して、固定費を平準化させるためです。

 

毎月賞与引当金を計上していれば、そのまま計上額を支給していいのか?

今回はその判断基準について説明をさせていただきます。

 

当然、これ以外にも判断基準はあると思いますが、支給の可否判断の一助にしてもらえたらうれしいです。

 

▢損益はどうか?

まず、当期の損益はどうかを予測してみます。

当期の着地がどうなのかを売上予測を基に損益構造を当てはめてみます。

 

赤字だったら支給しない、という単純なものではないですが、判断基準のひとつとしてとても大事なことだと思います。

 

同様に来期の損益も予測してみます。

売上高推移の傾向や、損益構造の変化を考慮して予測してみましょう。

 

▢資金はどうか?

損益予測ができましたら、次は資金繰りがどうなるかを検討します。

とはいっても、そんなに精度の高い予測は必要ないと思います。

損益予測(+減価償却費)△借入金の返済額

ぐらいで結構です。

そろそろコロナ融資の返済が開始されるものもあるかもしれません。

借入金の返済予定一覧表を作成しておくと便利です。

 

これによって、当期末・来期末の資金をざっくりシミュレーションしてみましょう。

資金予測によって、新たに借り入れをする必要があるか?を判断します。

借入が必要なのであれば、早く借りておく、あるいは当期の損益を黒字で着地させられないかを検討する、などの対応が必要です。

2期連続で赤字になっていないか、債務超過の状態にならないか、など借入に悪い影響がありそうなことを少しでもつぶすことはできないかを検討しましょう。

 

要するに、赤字にならないようにとか、資金がショートしないようにとか、金融機関から資金調達ができるようになどの切り口で賞与を支給するかしないか、あるいはいくら支給するのかを判断するということです。

 

以上のことを勘案した結果、支給しない、支給金額を少なくするということに決まったら、社員さんに数字を使って説明をすることが大事です。

売上だけでなく、損益の状況や貸借対照表、特に資金の状況をしっかりと説明し、「だから今期は支給できないんです」ということを分かってもらうことです。

 

特に小規模零細企業は財務諸表を社員さんに公開することは少ないと思います。

売上は上がっているのに、忙しくしているのに、去年は支給があったのに。それなのに支給がないということであれば、不満・不信感が残ってしまいます。

その場では言わないだけで、ずっと思っています。

 

社員の皆さんが心待ちにしている賞与の支給がないのであれば、せめてその理由今後どうなったら支給があるのかの説明は絶対に必要だと思います。

 

会社から説明をするのが難しい場合、会計事務所に手伝ってもらうのもいいかもしれませんね。

第三者である会計事務所が説明することによってうまくいく場合もあるからです。

 

賞与はもちろん支給するのが一番です。

ただ、賞与を支給したばかりに会社が存続できなくなったということにならないように事前にシミュレーションをすることが大事ですし、どういう理由で支給しないかをはっきりと言語化しておくことが必要です。

なぜなら、それは社員さんたちに対する説明責任を果たすために必要だからです。

そして、今後どうしたら支給できるのかの基準にもなるからです。

 

一度に多額のお金が必要となる賞与ですが、社員さんにとっても会社にとっても大切なお金が絡むことです。慎重に判断していきましょう。