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第76回 人材の確保ができている企業と確保できていない企業の違いは?
2023.08.15 | 採用
ちょっと昔のことではありますが、2015年の中小企業白書に
中小企業・小規模事業者における人材の確保、育成という項目がありました。
(第2部 第2章 第2節)
中小企業白書とは
中小企業基本法に基づいて政府が毎年国会に提出する
「中小企業の動向及び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告」の略称。
1964年3月以来,毎年中小企業庁が国会に提出する。
内容は最近の中小企業の動向,課題,当年度の中小企業施策などから成る。
その中では、2014年12月に行われたアンケート調査をもとに
人材の確保ができている企業とできていない企業の特徴などがまとめられています。
9年も前のアンケート調査なので、現在の状況を必ずしも反映しているとは言えないかもしれません。
しかし、内容を見てみると今でも「なるほど~」と思えることがたくさん載っていたので
みなさんにお伝えできればと思います。
人材の確保ができている企業とできていない企業の特徴
人材はどのような企業に集まるのでしょうか?
「ウチは給料は安いけど、やりがいのある仕事ができる」
とか
「ウチは職場環境に配慮しているよ」
と思われている中小企業経営者の方は多いのではないかと思います。
調査でも実際に、
4割程度の中小企業が「ウチの仕事にはやりがいがある」とか
3割以上の中小企業が「ウチは職場環境に配慮している」
と感じており、それを強みだと感じているようです。
出典:中小企業庁HP
青い線グラフが確保てきている企業の特徴で
赤い線グラフができていない企業の特徴です。
オレンジ色の棒グラフは、確保できている企業とできていない企業との差を示しています。
ただし、それは採用がうまくいっている企業もうまくいっていない企業も
同様とのことで、それらによって採用の結果が大きく左右されることはないのでは
と分析されています。
(オレンジ色の棒グラフのうち右の2項目)
では実際に、どういった部分で差がつくのかというと
1.人材確保のためのノウハウ・手段
2.労働条件(労働時間、職場環境、休暇制度等)
3.賃金(基本給、賞与)
この3点において大きく差が認められたとのことです。
(オレンジ色の棒グラフのうち左の3項目)
2と3は一般的にも言われている通りで、私たちも感覚としてそのとおりだと感じます。
しかし、当時の調査では1の人材確保のためのノウハウ・手段が
最も差がついているという結果が出ています。
人材確保ができている企業は採用力に強みがあるということでした。
私たち中小企業の多くは定期的に採用をしているわけではないので
ノウハウが蓄積されておらず、企業としての採用力が強化されません。
今後もますますその力の差がついていくことは間違いないと思います。
人材確保のためのノウハウ・手段
白書では、中小企業・小規模事業者のうち、「人材を確保できている企業」と「確保できていない企業」を比較した結果
「人材確保のためのノウハウ・手段」に顕著な差があるとしています。
そこで、採用手段、採用担当者、情報発信力の3つの観点により、人材採用に関して詳細な分析をしています。
採用手段
新卒採用の場合、ハローワークの利用率は高いですが、採用実現率は高くないそうです。
(採用実現率とは、アンケートにおいてハローワークを利用したことがあると答えた企業のうち
ハローワークの利用を通じて採用をした実績があると答えた企業の割合のことです。)
採用実現率が高かったのは、教育機関の紹介、知人・友人の紹介、取引先・銀行の紹介という
いずれも紹介というチャネルを利用した場合でした。
中小企業の採用といえば中途が多いのですが、中途採用の場合はハローワークや紹介の利用が
多いのは新卒採用と同様ですが、就職情報誌や求人広告の利用割合が高くなっています。
人材の確保手段ごとの課題
採用手段ごとにもアンケートを取っています。
ハローワーク
コスト(1.0%)や使いづらさ(5.8%)については問題があるとは考えられてはいないようですが、
人材の数の少なさ(27.7%)、人材の質(33.9%)について課題があると考える企業が多いようです。
お金がかからなくて使いやすいけれど、効果がイマイチということでしょうか。
個人的な感覚とも合致している気がします。
紹介(知人・友人など、教育機関、取引先・銀行)
人材の質や定着率を課題だとしている企業は少ないですが、人材の数が少ないと考える企業が多いようです。
人に紹介するときは紹介責任が生じますので、変な人や合わない人を採用してしまうことは
少ないですが、他の採用手段に比べて数が少なくなってしまうのは仕方がないですね。
紹介を受けてしまったら断りづらいというのがネックになることもありますね。
求人広告
人材の数を問題にしている企業は少ないですが、コストが過大だと感じているようです。
他の手段だとほぼ無料で人材確保ができるにもかかわらず、お金を使いたくないという
気持ちはよーく分かります。何十万から百何十万もかかるなんて信じられないでしょう。
ただし、もうそんな時代じゃない、というのは肝に銘じておいた方がいいかもしれません。
優秀な人材は、お金のかかる方法で、お金をかけた企業に採用されているのは間違いないと思います。
ただし、お金をかければ必ず採用がうまくいくわけではないのが難しいところです。
体力のない私たち中小企業には本当に頭の痛い問題です。
自社HP
応募がコンスタントにあるわけではないので、効果的だと考えられていないようです。
半分以上の企業(50.9%)がそう答えています。
ただし、自社HPには文字制限などありません。自由に記載することができるので
求職者に対して十分な情報提供をすることができます。
求職者が自社HPを見ないわけがないので、きちんと作りこんでおく必要がありますが
それは他の手段の補完的な役割を果たすためだと思った方がいいのではないでしょうか。
人材確保の担当者
中小企業の73.3%が経営者が採用担当をしているとのことです。
小規模事業者に限ると80.4%とさらに高くなります。
人事を担当している社員が、採用を担当するという体制は
かなり規模が大きくならないと難しいですよね。
白書では、小規模になればなるほど担当者が決まっておらず
組織的に採用活動が行われていないと分析されてます。
採用活動は「ハローワークに原稿を提出して、応募してきた求職者と
面談をすること」だと思っている経営者様には厳しい指摘だと思います。
情報発信力
当社は採用活動をしていますよ、応募を受け付けていますよということはもちろん
自社の魅力について発信をすることが必要です。
このアンケートは、就職時にどの項目が明確になっていたかを企業側ではなく、
就職した側からとっています。
いずれの項目も大企業>中規模企業>小規模事業者の順になっているのが確認できます。
私たち中小企業は情報発信ができていないことがこのアンケートで明らかになっています。
私たちが回らないお寿司屋さんに気軽に行けないのは高いからだけではなく
値段がいくらかかるのか分からないという理由があると思います。
求職者も同様に、一番大事な賃金であるとか労働条件を明確にされないと
入社しようと思わない、と思うのは当たり前ではないでしょうか。
ぜひ原文をご覧になってみてください。
2015年度 中小企業白書
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H27/h27/index.html
中小企業白書(2014年度版から2023年度版まで)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/
私たち中小企業に足りていないものというのがいくつもあるのが分かります。
すべてを大企業や中堅企業並みにすることは難しいでしょうが、やるべきこと
やれることはいくつもあるかと思いますので、それらについてもまたお話ができればと思います。