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経営コラム

第30回 その中期事業計画はつじつまが合っていますか?

2022.03.03 | 未分類

私たちは会社の5年ぐらい先のことを見据えた事業計画を中期事業計画と呼んでいますが、中期事業計画を作成する際に、気を付けておくべきことがいくつかあります。

今回はそのなかでも「社員一人あたり」の数字や「労働分配率」について説明をします。

 

右肩上がりで前向きな事業計画はとてもいいものだと思います。

作成された社長様の意欲を感じることができ、ものすごくうれしいです。

ただ、その計画は無理が生じたものになっていないかどうか検討しませんか?

そのためは以下の3つの視点から確認してみましょう。

 

一人あたり売上高、一人あたり粗利益額をチェック

計画における目標売上高や目標粗利益額を、計画における社員数で割って計算するだけです。

(勤務時間が短いパートの方は2人で社員1人とか3人で1人とか工夫しましょう。)

 

そうやって計算した数字が一人あたり売上高・一人あたり粗利益額となるわけですが、中小企業は労働集約型の事業構造となっています。

ですから、事業構造が大きく変わらない限り一人あたりの売上高や粗利益額も大きく変わらないはずです。

 

もし、大きく変わるのであれば要注意です。

同じ商品を同じ値段で売るのであれば、一人あたり売上高が何十%も増加するということはなかなか難しいことだと思います。

その分社員さんに負担がかかっているということですし、そもそも実現が難しいかもしれません。「そんなに担当件数を増やせる!?」という視点です。

チェックしてみてください。

 

*事業構造

事業構造とは、粗利益を稼ぐ仕組みのこと。当社では、粗利益率とか商品単価の高低や、人が稼ぐのかモノが稼ぐのかということを指して言っています。労働集約型の事業構造とは人が粗利を稼いでいるということであり、固定費に占める人件費の割合がとても高くなります。

 

ちなみに、私たち中小企業であれば一人あたりの粗利益額は800万円以上を目指しましょうとお伝えしています。もちろん高ければ高いほど生産性が高く、社員さんに払ってあげられる給与も高くなります。

製造業など、資本集約的型(設備で稼ぐ)の事業であれば1000万円と言っています。

 

1人あたり人件費もチェック

一人当たり売上高が増えて社員さんの負担が増えているにもかかわらず、一人あたり人件費が横ばい、あるいは減っていたりしていないでしょうか?

人は歳を取ります。ライフステージが変わっていくにしたがって支出も増えていきます。

社員さんひとり一人の生活を考えた昇給を計画できているでしょうか。

もちろん入ったばかりの社員さんの給与は既存の社員さんよりは低く設定されているでしょうから、分けて計画を立てたほうが良いのかもしれません。

「人が増えて人件費の総額もアップしているけど、個人の給与はアップしているか?」ということです。チェックしてみてください。

 

労働分配率をチェック

労働分配率とは、稼いだ粗利益額のうち何%を人件費として分配しているかという指標です。

算式は、「人件費÷粗利益額」です。

*人件費には、役員給与・社員給与・賞与・法定福利費・福利厚生費を含みます。

粗利益額と人件費との比較なので、生産性を示していて、数値が低いほど生産性が高いということになります。

 

私たち中小企業は労働集約型の事業構造であることが多く、その事業構造が大きく変わらない限り、多少売り上げが伸びたからと言ってこの数字が劇的に改善することはありません。

 

例えば、粗利益額が800万円で人件費が450万円だとすると、労働分配率は450万円÷800万円=56.25%となります。

これが50%になるためには、粗利益が800万円のままだと人件費を800万円×50%=400万円にまで下げなければいけません。一人当たり50万円も年収が減ってしまいます。

 

人件費をそのままとすると、粗利益額を450万円÷50%=900万円にまで上げなければなりません。割合にすると12.5%増です。

 

社員さんが稼いでくれた粗利益と人件費のバランスは大きく変わっていないか?」ということです。

また給与がアップすれば社会保険料もアップしますので、概算でいいので忘れずに計算しましょう。

 

 

せっかく作った中期事業計画です。

売上高、・粗利益額・人件費について、一人たりの数字に変換してみて、つじつまが合っているか、労働分配率は大きく変化していないかをしっかりとチェックして事業に臨んでいきましょう。

第三者の目が必要であれば、私たちがしっかりとチェックさせていただきますよ。