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第50回 役員さんにも賞与を支給してモチベーションアップを
2022.11.30 | 給与・賞与
前回のお知らせでは、社員さんに対する決算賞与を支給しませんか?という提案でした。
目標となる利益を定めて、毎月損益を社員さんと一緒に追っていく。(財務情報の開示)
上回ったのであれば全員で達成した成果なので、全員で分け合おうということです。
全てを支給してもいいですが、超過した利益の半分とか3分の1とか基準を定めましょう。
会社の取り分も必要だと思います。
もちろん、全て分配するのが良くて、一部しか分配しないのが悪いと言っているのではありません。
基準を持ちましょうということです。
なぜそんなことをするのか、ということですが、社員さんに多くの給与を払えるようになりますし、それが社員さんのモチベーションアップにもなるからです。
決して数字に強くない皆さんが数字に興味を持つことによって、より数字を意識した経営につながるでしょう。
ここでタイトルの「役員さんにも賞与を」につながってくるのですが、社員さんと同様に社長・役員の方にも目標達成のモチベーションアップのために決算賞与を支給してみませんか?
役員に賞与は支給できない?
役員には賞与を支給することができないんじゃないの?と思われるかもしれません。
これ、正確には「役員に対する賞与は法人税を計算する際に費用として扱うことができないので支給していない」でしょう。
役員さんに賞与を払っても会社の税金は少なくならないのに、賞与の支給を受けた役員さんにはしっかり税金がかかるのです。
税理士であれば、お客様にあまり税金を払ってほしくないと思っているので、役員に対する決算賞与を提案することはあまりないのかもしれません。
しかし、私たちは役員さんにも決算賞与を支給してもいいんじゃないかと思っています。
役員のモチベーションアップは何よりも大切だ!多少税金が多くなっても支給するんだ、と割り切ってもいいでしょう。
事前確定届出給与に関する届出書を提出する
ただ、どうせなら中小企業にはもう一つ方法があります。
それは「事前確定届出給与に関する届出書」を提出することです。
この書類を提出しておけば、役員さんに支給した賞与を経費(税法では「損金」といいます)にすることができるのです。
注意することがいくつかあります。
■提出期限
「事前確定届出給与を定めた株主総会等の決議をした日」または「職務の執行を開始する日」のいずれか早い方から1か月を経過する日もしくは、「会計期間開始日から4カ月を経過する日」のうち、いずれか早い日です。
定時株主総会で事前確定届出給与の支給の決議をすることが多いでしょう。
また、決議をした日と職務の執行を開始する日を同日にされるのであれば、株主総会の決議日から1カ月以内に提出する必要があります。
【参考】国税庁HP 事前確定届出給与に関する届出
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/5104.htm
1日でも遅れたら損金にすることはできなくなります。
提出が遅れたからといって、税務署の担当者さんがわざわざ連絡をくれるでしょうか?
要注意です。
■記載内容
①誰に、②いつ、③いくら支給するのか、を記載します。
ここに記載していることが守られないと、役員に支給した賞与の全額が損金にならなくなります。
これも要注意ですね。
■支給時期を2回に分けた場合
事業年度の真ん中で1回、それから決算月にもう1回、合わせて2回支給しますよと届出をしたとします。
最初の1回は届出どおりに支給したのに、2回目は記載内容と異なる支給の仕方をしたとします。
その場合、1回目の支給は記載どおりに支給したということで損金になるでしょうか?
損金になりません。
リスクになりますので、役員賞与は1回にしておくことをお勧めしています。
■一部の人だけ支給した場合
A取締役とB取締役の2人に対して事前確定届出給与の届出をしたとします。
何らかの事情でA取締役には記載どおりに支給できたのに、B取締役に対してはできなかったとします。
その場合、A取締役に対する賞与は損金になるでしょうか?
なります。
当然、B取締役に支給した賞与は損金にならないので注意です。
役員さんに賞与を支給することができるのですが、事前に税務署に届出書の提出が必要になります。
事前に賞与の金額を決定するのであれば、その金額分だけ毎月の給料を増額させればいいじゃないか、と税理士さんに提案(説得?)されるかもしれません。
書類を作成するのは面倒ですからね。
支給しない場合にはどうするか
もし、事前確定届出給与を支給しないこととした場合は、支給予定日より前に本人さんから辞退の申し出をしてもらいましょう。
そして、その申し出を受けての取締役会での決議が必要となります。
辞退と決議がない場合、役員さんにその賞与分の税金が課税されてしまいます。
もらってもいない賞与に対して税金を払うことになるのは避けたいところです。
また、支給額を0円とした場合には、記載内容と異なってしまいますが、支払った賞与がないので損金不算入となる金額も0円となります。
おわりに
社員さんに対する決算賞与という考え方を示しましたが、役員さんにも同じように業績に対するモチベーションを高めてもらうために決算賞与を支給してはいかがでしょうか?ということでした。
そのためには届出が必要で、その記載どおりの支給がされないと損金にならないこともお伝えしました。
事前確定届出給与本来の趣旨とは異なりますが、目標となる業績を達成すればそのまま支給するし、達成できないのであれば支給しない(0円)というやり方もあります。
お金がすべてではないですが、お金が全く必要ないというわけでもありません。
全社員のモチベーションアップの一助として決算賞与を利用してもいいのではないでしょうか。