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第56回 値上による客数減少はいくらまでなら耐えられる?自社の数字でシミュレーションを
2023.01.19 | 未来会計図
値上げをするとお客様の数が減ってしまう
円安や原油高が急に進んていて、原材料の高騰が続いています。
あらゆるものの価格が上昇して、生活費も高騰するため
社員さんの給与も増額していかなくてはならない状況です。
そういった状況であれば、私たち中小企業にとっては
販売数量を増やしたり、経費の削減をしていくことも大事ですが
一番大事なのは価格の改定をしていくことだと思います。
しかし、
物価が上がっているのだからどんどん値上げするべき!
という考え方の社長様がおられる一方、
値上げをするとお客様が減ってしまうから難しい・・・
という考え方の社長様もおられることと思われます。
今回は、そんな中小企業の社長様のために
値上げをした場合、どれくらいの客数の減少であれば
・現在の損益を維持できるのか
・目標とする利益が出せるのか
・赤字であれば、黒字化できるのか
について、どのように計算するのかをお伝えしたいと思います。
値上げをするということは、自社の損益構造が変わるということです。
自社の明るい未来のために、ぜひ取り組んでいただきたいと思っています。
どれだけ客数が減少してもいいのかをシミュレーションしてみましょう
計算をするのに必要なデータは
売上高 90百万円
変動費 27百万円(30%)
粗利益 63百万円(70%)
固定費 65百万円
経常損失 △2百万円
----------------
客単価:9000円を10000円に値上げしようと思っている。
お客様数:10000人
売上高=客単価90000円/人×10000人=90百万円
まずは、お客様一人当たりの数字を計算します。
客単価は9000円です。変動費率が30%なので
変動費は 9000円×30%=2700円 となります。
粗利益は 9000円-2700円(変動費)=6300円 と計算されます。
お客様が一人来店されると、9000円の買い物をして
その変動費は2700円なので、6300円の粗利益が稼げているということがわかります。
これについて、1000円の値上げをするということなので
一人当たりの購入数量が変わらないとしたら
客単価は、9000円から10000円にアップします。
そして、粗利益額を計算しようと思いますが、粗利益率は70%なので
10000円×70%=・・・・
ではありません。
最初に申し上げた通り、値上げをすると損益構造が変わるからです。
変動費について考えてみます。
値上げによって一人当たりの変動費はどう変わるでしょうか?
もちろん変動費の金額は変わることはありません。
ですから、この場合は2700円のままです。
では、粗利益額は?
値上げ後の客単価10000円から、(値上げ後も変わらない)変動費2700円を
引いて計算すると、7300円となります。
つまり、値上げをすることによって変動費率は30%から27%に
粗利益率は70%から73%に変わってしまうのです。
ここまで計算できれば、計算はすぐにできます。
現在の損益を維持するための客数
まずは、現在の損益を維持するためには、いくらまでの客数ダウンに
とどめることができればいいのかを検討します。
*値上するにあたって、固定費の増減はないものとします。
固定費が変わらないわけですから、損益を維持するためには
値上げ前と同じだけ粗利益を稼げばよいことになります。
値上げ前の粗利益額は63百万円なので
63百万円÷一人あたり粗利7300円/人≒8630.1人
となり、8630人超の人が来店してくれれば粗利益を維持し、
損益を維持できることとなります。
割合を計算すると
8630人÷10000人=86.3%
14.7%までの客数減少に抑えることができれば損益を維持できることが分かります。
黒字化するための客数
黒字化するためには、粗利益額が固定費を上回ればいいわけです。
ですから、固定費65百万円のときの客数を計算します。
65百万円÷一人あたり粗利7300円/人≒8904人
ということで、8904人超のお客様が来店してくれれば黒字になることが分かります。
割合を計算すると
8904人÷10000人=89.0%
11%までの客数減少に抑えることができれば、黒字化することが分かります。
目標とする利益を出すための客数
最後に、利益を出すための客数を計算します。
仮に5百万円の利益を出したいということであれば、
利益5百万円に、固定費65百万円を加算した70百万円を稼げばいいことになります。
上記と同様に、目標とする粗利益額を値上げ後の一人あたり粗利益額で割るだけです。
70百万円÷一人あたり粗利7300円/人≒9589.0人
9589人超のお客様が来店してくれれば5百万円の利益が出ることが分かります。
色々なケースを想定してシミュレーションしてみてください。
1000円値上げだけではなく、500円にしてみるとか1500円にしてみるとか。
一部の商品だけ値上げをするなら、その商品が売り上げに占める割合を出せば計算できると思います。
いくら値上げすればいいかの正解は、シミュレーションで出せるものではありませんが
そのシミュレーションを基に、「これくらい減少してもいいのであれば、いけそうだ!」と思える金額を見つけ出して
まずは実行することが大事だと思います。